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2020年11月8日6 分

誕生秘話#2

最終更新: 2020年12月6日

今回は塾を立ち上げた理由の2番目、技術革新による世界と社会の変化について書いていきます。長くて大きな話ですが、よろしければお付き合いください。


1.世界的IT企業とその影響力

皆さんご存知のAmazon、Google、Facebook、YouTube、iPhone。さて、これらの企業やそのサービス・製品ができて何年ぐらいが経っていると思いますか?Amazonは1994年に設立され、Googleは1998年、Facebookが2004年で、YouTubeは2005年、最初のiPhone(日本では未発売)が発売されたのは2007年でした。AmazonとGoogleは設立されて20年以上経っていますが、それ以外はできてすべて20年以内です。小学生や中学生の皆さんにとってはもうあることが当たり前かもしれませんが、一定上の年齢の人にとっては、次から次へとこのような企業のサービス・製品が現れ、生活が便利になったのは驚くべきことではないでしょうか?(ちなみにマイクロソフトは1975年設立、Appleは1976年です。)
 

このような企業に共通しているのは、コンピューターやインターネット、それらを動かすための技術、いわゆるICT(Information and Communication Technology)に基づいたサービス・製品を提供していることです。インターネット自体は1960年代からありますが、この技術を使ったサービスがでてきたのが1990年代からでした。そして技術がさらに進展し、さまざまなサービスが増えたのが21世紀になってからです。現在では巨大な組織へと成長したこのような世界的企業のサービス・製品は、生まれてまだそれほど経っていないにもかかわらず、私たちの生活に欠かせないものになっています。


2. ICT・AIが当たり前の社会へ

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの略、そしてMicrosoftを加えればGAFAM)と呼ばれているこのような企業だけでなく、いまでは他の多くの企業がICTを利用しています。その基盤となるのが、半導体や、スマートフォンなどに用いられている通信技術(最近よく言われている5Gがその一例)、AI(人工知能)、さらにはロボットなどの先端技術です。これまでもICTやAIを用いた製品・サービスが社会に広く使われてきましたが、今後もこのような技術がさらに浸透し、私たちの生活に欠かせないものになっていくことが予想されています。

その中でも世界や社会を大きく変えると予想されているのがAIです。ニュースでも取り上げられましたが、チェスや碁では、AIがプロの選手や棋士に完全に勝つまでになっています。また東京大学合格を目指す「東ロボくん」というAI研究も進められてきました。2016年のセンター試験模試で、英国数理(物理)社(世界史)5教科でいずれも平均点を上回り、総合偏差値57.1をマーク。有名私立大学や複数の国公立大学に合格する実力に到達しました。現在では、AIという言葉を聞かない日はないくらい、多くの分野で活用されるようになっているのは、皆さんもご承知かと思います。

一方でAI・ロボット技術の発達により、現在ある仕事の半分が自動化され、なくなると懸念されています。AIの研究を行っているオックスフォード大学の研究者、マイケル・A・オズボーン准教授が、2014年に発表した論文「雇用の未来 — コンピューター化によって仕事は失われるのか」は、世界の多くの人に衝撃を与えました。オズボーン准教授は、コンピューターによる自動化が進むことにより、20年後にはいまある仕事の47%がなくなる結論付けました。ちなみに日本では49%の仕事が消滅するという試算もあります。注)

なくなるとされる仕事には、ホテルの受付、一般事務員、スーパー・コンビニの店員、清掃員、製造業の一部の職種などが挙げられています。要するに、単純作業的な仕事が消えていくのです。言い方を変えれば、AIやロボットがいまある人間の仕事を奪っていくことになります。なお介護職、メンタルヘルスケア、作業療法士、栄養士、医者、営業職、教育コーディネーター、小学校教員、警察などは、今後も残る職種とされています。

ICTやAI、ロボット分野の技術革新が急速に進んでいます。すなわち技術が劇的に発展しています。そしてその先端技術が瞬く間に普及し、私たちの生活と切っては切れないものになっています。先端技術が私たちの生活を便利で豊かにしてくれる一方、いまある人間の仕事を肩代わりするようになるのです。その結果、私たちのライフスタイルそのものを変えていくのです。ライフスタイルが変わり、人間が必要とされる仕事も変わる。世界はこのように急激に変化しようとしています。そしてこの変化は教育にも影響を与えています。

注) さらにご興味ある方は、以下の野村総合研究所のレポート要約をご覧ください。

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf


3.周回遅れの日本

新型コロナ対策をめぐって明らかになったことの一つに、日本のICT化(デジタル化)が世界から見て、非常に遅れていることが挙げられています。自粛要請で、各企業に家庭からのテレワークを要請したにもかかわらず、はんこを押すためだけに出社したという話もありましたが、電子印鑑を使えば、当然出社せずに済んだわけです。また特別給付金の申請でも、スマホやパソコンからの申請のために、マイナンバーカードの利用を促しましたが、マイナンバーカードを作っていない方も多く、結果として市役所が込み合い、給付が遅れる事態も見られました。

実際に世界的なランキングを見ても、日本は遅れつつあります。例えば、スイスのIMDという研究所が2019年に発表した、「世界デジタル競争力ランキング2019」では、世界63カ国・地域のデジタル競争力のランキングで63位中、34位でした。また教育分野では、経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査で、加盟国の中で最下位でした。

先進国として、一見すると進んでいるかのように見える日本ですが、デジタル化の点で言うと、実際はそうでもなく、行政(最近ニュースにもなったデジタル庁の創設検討は良い例)も企業も、そして教育も世界の最先端からは置いてかれつつあります。

ここ数年このようなニュースを見たり、聞いたりし、そしてまわりを見ても相変わらずFAXを使ったり、メールで済むことを、わざわざ電話するのを見てきたので、このような状況を変えることに少しでも貢献できればと思っていました。ですから仕事で何かできればと考えるようになったわけです。

デジタル化の遅れということでは、教育(学校も塾も)は日本の中でも特に遅れていています。(ただしコロナでやっと公立の学校に1人1台にパソコンやタブレットが支給されるようになるので、状況は改善されるとは思いますが。) 塾の役目は当然、生徒の成績を上げ、志望校に合格させることですが、これまでの延長上にある教育を提供するだけではいけないと思います。少しでも多くの人に教育ICT化の遅れという現状を知ってもらい、その遅れを取り戻し、ますますICT化していく次世代の社会でも生きていける人材を育ていければというのが、自分の思いです。

それでは長くなりましたので、今回はここで筆を置きます。(これも正確な表現では、“タイピング”を止めるですが) 

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